最近、「ARM系」と呼ばれるCPUを搭載したWindowsパソコンが増えてきました。ARM系と言われても聞き慣れないかもしれませんが、実は世界中で多くのシェアを占めているCPUでもあります。
ただこのARM系CPU搭載のWindows、業務で使うにはちょっと待ったほうがいいかもしれません。従来のWindowsと同じ感覚で使おうとすると、さまざまな制限やデメリットがあるので想像していた使い方ができない可能性があるからです。
この記事では、ARM系CPUを搭載したパソコン(ARM版Windows)の特徴やメリット、使うときの注意点などについて解説します。
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簡単!ARM版Windowsパソコンの見分け方
パソコンを購入する時、CPUやメモリ、データ容量を確認すると思います。見るべきところはCPU(プロセッサー)!
WindowsでのARM系CPUの利用はQualcomm社のSnapdragonが多く使われていますが、過去にはMicrosoftとQualcomm社で共同開発したMicrosoft SQを搭載したPCもありました。またその他、参入を計画しているメーカーもあるようです。
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ARM版Windows、ARM系CPUとは?
ARM版Windowsとは、従来のパソコンによく使われているCPU(IntelやAMDなど)とは違う構造=ARMで設計されたCPUを搭載したWindowsのことです。
ARM自体は製品名ではなく企業名であり、ARM社が開発したプロセッサー技術を用いて製造されたCPUが「ARM系CPU」と呼ばれています。ARM社が発明したレシピをベースにして、さまざまな会社がアレンジを加えて完成した料理(CPU)を売っているとイメージすれば分かりやすいかもしれません。
実は誰もがARM系CPUを使ったことがある?
ARMという名前に馴染みがなくとも、実は多くの人が使ったことがあるはずです。
スマートフォンのiPhoneシリーズやAndroidシリーズ、タブレットのiPadなどにはこのARMベースのCPUが使われており、有名な製品でいえば「Snapdragon」やMacのパソコンで使われる「Apple Mシリーズ」などがあります。
世界的に見てもパソコンよりもタブレットやスマートフォンの方が普及台数が多く、純粋な台数ベースで言えばARMの方が私たちに触れる機会の多いCPUだといえるでしょう。
さらに言えばスマートフォンだけでなく、身近にあるプリンター・デジカメ・テレビ・洗濯機などの家電製品、カーナビや医療機器まで、さまざまな分野でもARMのプロセッサー技術が使われています。
実はかなり普及しているのだけど、一般の人にはあまり意識されていないCPUと言ってもいいかもしれません。
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ARM版Windowsの特徴やメリット
ARM版Windowsの特徴やメリットを解説します。どちらかと言えば、ARM系CPUの特徴とも言えますが、従来のWindowsパソコンと比べ、どんな点が優れているのか知っておくといいでしょう。
バッテリー持ちが良い
ARMプロセッサー自体がスマートフォン向けに研究開発が進められたこともあって、ARM系CPUは消費電力が少ないとされています。そのため、ARM版Windowsを搭載したPCはバッテリー持ちが良いです。
スペックが全く同一ではないのであくまでも参考程度ではありますが、同時期に同メーカーで発売されているノートPCのバッテリー持続時間を比較すると、下記のようになっています。
[動画再生時] 約11.3時間、[アイドル時] 約21.1時間
[動画再生時] 約21.8時間、[アイドル時] 約28.4時間
このようにバッテリー持ちが劇的に違うことが分かります。
これはCPUが働いていないときに消費電力を抑えるという技術が組み込まれているためで、バッテリー持ちが重要なスマートフォンと同様に、ARM版Windows版もその恩恵を受けています。
CPUの製造コストが安いので、パソコン本体の価格が抑えられる
ARM系CPUはバッテリーを長持ちさせることを優先しており、複雑な重たい処理よりも基本的な処理を効率よくこなすように設計されているので、製造コストを安くできます。
その結果、ARM系CPUを搭載しているパソコンは本体価格も抑えられます。
発熱を抑えられるので、パソコン本体を薄く小型化できる
前述のとおりARM系CPUは消費電力が少ないという特徴がありますが、消費電力が少ないということは発熱を抑えられることにも繋がります。
特にノートパソコンなどは、パソコン内部の熱を排出するためのファンが不要になるといったメリットがあるため、ARM系CPUを搭載しているとパソコン本体を薄く小型化できるようになります。
最新のAIには強いかも
2024年5月にMicrosoftが、新しいWindowsパソコンのカテゴリとして「Copilot+PC(コパイロットプラスピーシー)」を発表しました。AI技術を活用した新世代のパソコンとも呼ばれており、このブランド名が冠されるのは、Microsoftの推奨スペックを満たした製品だけとなっています。
引用元:Microsoft
このCopilot+PCですが、発表当初のモデルにはすべてARM版Windowsが搭載されていました。従来のCPUだとAIによる並列処理を支えきれず高負荷になってしまうため、省電力かつ高性能なARM系CPUが採用されているようです。
最新AI技術の実力を100%発揮するのであれば、ARM版Windowsは欠かせません。今後もパソコンにAI技術が搭載される流れはさらに加速していくと予想されているため、今後はARM版Windowsが主流になっていくのではないでしょうか。
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ARM版Windowsの大きなデメリット
引用元:Freepik
ここまでARM版Windowsの特徴やメリットをご紹介しましたが、ARM版Windowsには良い部分だけではなく、従来のWindowsよりも大きくデメリットになってしまう点があります。当社で実際に対応させて頂いた事例も交えながら、ご紹介します。
対応していないアプリケーションも多い
従来のIntel製・AMD製のCPUが搭載されていたWindowsパソコンで動いていたアプリケーションが、ARM版Windowsではうまく動かないことがあります。
例えるならガソリン車用に作られた部品(アプリ)を、そのまま電気自動車に載せ替えてもうまく動かないのと同じことです。どちらも「車」であることは同じですが、動く仕組み自体が違うので、部品(アプリ)もその車と合うように調整が必要になります。
従来のWindowsパソコンで動くアプリケーションをARM版Windows用に調整し直す必要があるため、アプリケーションのメーカーが対応しなければどうにもできません。
当社でもARM版Windowsをお使いのお客様から「Adobe製品が使えない」「AutoCADが使えない」といったお問い合わせを頂いた事例がございます。その後、Adobe製品はARM版Windowsに対応したようですが、AutoCADは未だ対応していません。
会計ソフトや人事管理ソフトなど、業務で必要不可欠なアプリケーションが正常に動作しない可能性もあるため、新しく導入を検討しているパソコンがARM版Windowsでないかどうかを事前確認しておくようにしましょう。
日本語入力ソフト(ATOK)が使えないという深刻な問題アリ?
日本圏でARM版Windowsが普及しない(選ばれない)要因の一つとして、日本独自のアプリが使えないことも挙げられています。その典型的な例の一つが「ARM版Windowsでは、日本語入力ソフト(ATOK)が使えない問題」です。
引用元:ジャストシステム
上記は日本語入力ソフト「ATOK」動作環境ページのスクショです。「ARM版Windowsは動作保証外です」と明記されており、ARM版Windowsでは正常に使用できないことを示しています。
ARM版Windowsで動くすべてのアプリでATOKによる文字入力できないわけではなく、一部のアプリで文字入力ができない現象のようです。
業務の都合上「ATOKの辞書セットを使えないと支障が出る」といった方も多いため、深刻な問題となっています。
対応しているデバイスドライバが提供されていない
ARM版Windowsに対応していないアプリケーションもありますが、ハードウェア側でもまだまだ課題が多いようです。
一部のプリンターやスキャナーなどのハードウェアは、ARM版Windowsに対応しているデバイスドライバを提供していないため、実質そのハードウェアが使えなかったり、使用が制限されることがあります。
実際に当社で対応させて頂いた事例でも、プリンターのドライバがメーカーから提供されておらず、Windowsの標準ドライバでしか印刷できなかったため、社内標準の印刷設定ができませんでした。
引用元:EPSON
上記はEPSONの公式サイトのスクショですが、ARM版Windowsにおけるプリンタードライバの対応状況についての専用ページを設けて、注意喚起を促している場合もあります。
アプリケーションと同様に、使いたいハードウェアがあってもメーカーが対応したデバイスドライバを提供していなければ使えません。
これらのデメリットを踏まえた上で、ARM版Windowsを導入するかどうか検討してみてはいかがでしょうか。
プリンターが使えない場合は他の理由もあり得ます。以下のページもご参考ください。

特に古い業務ソフトを今でも使っている場合は動かないかも
先述したATOKもそうですが、特に古い業務ソフトを今でも使っている場合は動かない可能性があるので要注意です。
例えば会計ソフトで有名な「弥生シリーズ」などは、最新版であればARM版Windowsに対応していると公表していますが、2023年以前にリリースした製品だと対応していません。
引用元:弥生株式会社
何らかの事情があって古い業務システム(例えばAccessで作られたシステムなど)を使わざるを得ない状況もあるかと思いますが、古ければ古いほどARM版Windowsでは動かない可能性が高いと考えていいでしょう。
業務を行う上で欠かせないソフトがあるのであれば、「バージョンアップはできるか?」もしくは「ARM版Windowsに対応しているか?」をメーカーHPで確認するか、直接問い合わせてみることをおすすめします。
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まとめ:2025年現在ではARM版Windowsを業務で使用するのは控えたほうが無難
ARM版Windowsには、バッテリー持ちの良さや価格の安さ、AIとの親和性が強いなど薄型軽量なパソコンを選べるといった明確なメリットがあります。しかし、業務で使うには見過ごせないデメリットや制限が多いのも事実です。
現状だけで言えば、ARM版Windowsを業務で使うにはリスクが高く、メーカーによるアプリケーションの互換性やドライバ提供の準備が整うまでは導入を控えたほうが無難だといえるでしょう。従来のIntel・AMDベースのCPUを搭載したWindowsパソコンを選ぶことをおすすめします。