社内やオフィス内にて、ネットワーク経由でファイル共有をしたり、データの保管場所として便利なNAS(network attached storage/読み方:ナス)ですが、みなさんの会社ではお使いでしょうか?社内サーバに比べ、値段も安く、設定コストも抑えられるため、最近多くの法人さまより「設置(入れ替え)依頼」をいただいており毎週のように設定作業を行っています。そこで今回は、中小企業向けにどのようなNASを選ぶべき(購入すべき)か?そのポイントについて詳しく解説していきます。
メーカごとにちょっとづつ違いがありNASに求める条件によって選ぶべき機種が異なってきます。どのような機種を選定すればよいのか、準備はどうすればよいのか、とげおネットにご相談いただければ適したNASをご提案することが出来ます。お気軽に電話やフォームでお問い合わせください。
NASの種類
まず、NASにはどんな種類があるかおおまかに把握しておきましょう。
内蔵HDDが1台
多くのNASは複数のHDDに分散してデータを書き込みますが、1台のHDDのみで構成されている低価格帯のNASもあります。量販店でも安く売っていることが多いですし小規模なネットワークで利用するのであれば機能的に十分なので、少人数(家庭規模)の会社でよく使われています。ただし会社で使うなら壊れたときにデータが消えてしまうリスクが高いのでHDDが2台以上積まれている機種をお勧めします。
内蔵HDDが2台以上(RAID機能搭載)
NASの中に2台以上のHDDを内蔵し、各ハードディスクにデータを分散して書き込むことによって、NASを冗長化するシステム(RAIDシステム)を搭載している機種。RAIDの構成によってHDDの故障によるNASの耐久性が変わります。RAIDについてはコチラをご覧ください。
完成品モデルとNASキット
HDDを搭載した状態で売っている完成品モデルと、HDDを別途購入し組み立てるNASキットの2種類があります。完成品モデルは購入後そのまま使えるため最初の労力がかかりませんが拡張性には乏しくなります。NASキットは環境を自由にカスタマイズできますがHDDを別途購入して自力で組み立てる必要があります。
NASキットでHDDを購入する場合NAS向けのHDDをお勧めします。HDDメーカー各社からパソコン向け、サーバ向けなど用途別にいくつかのHDDが販売されています。パソコン向けのHDDに比べると高価なのですがNAS対応のHDDの最大の特徴は24時間365日の稼働を想定した耐久性にありその分価格が高くなっています。以下は各社のNAS向けのHDDになります。
OSがLinux
NASはネットワークを経由してパソコンとやりとりをするため、NASにはOS(基本ソフト)が入っています。家庭用や小規模オフィス向けのNASには、Linux(リナックス)という無料のOSを各メーカーが使いやすいように独自の機能拡張して搭載されていることが多いです。
【LinuxOSのメリット】
- 無償で利用できるのでNASの価格も安い。
- Windows,Mac両方に対応している。
- ファイル共有に必要な機能を一通り備えている。
- 筐体が小さいため場所を取らない。
【LinuxOSのデメリット】
- 同時接続が少人数(30人程度まで)の機種が多くそれ以上の人数だと遅い。
- 古い規格しかないことが多い(USB3.0がついていない、等)。
- サーバとしては非力のため「機能はついているけど実運用に使えない」機能がけっこう多い。
OSがWindows Storage Server / Windows Server IoT for Storage
OSといえばWindowsですが、NASにも「Windows Storage Server」というOSがあります。無料のLinuxと比べるとライセンス費用がかかるので、価格は高くなりますが、LinuxOSのNASでは実現できない機能が搭載されています。「機能をストレージ用途に限定したサーバ」という位置づけでいいと思います。会社の規模が大きくなるとLinuxをベースにしたNASでは機能や性能が不足することも多く、その場合こちらのサーバが選択されることも多いです。
【Windows Storage Serverのメリット】
- Windowsのネットワーク環境との親和性が高く、操作もWindowsとほぼ同じ。
- Active Directoryに対応。大規模社内ネットワークでのアクセス制限も設定可能。
- 多人数での同時アクセスに強く、パフォーマンスが落ちにくい。
- サーバとしては安価です。
【Windows Storage Serverのデメリット】
- 設定をするのにサーバ知識が必要になります。
- NASとしては高価格です。
- ファイル共有に特化しているので他の機能と併用は難しい。
- OS単体では購入できないため組み込まれたメーカー製品を購入する形になります。
法人向けのNASで必要な機能・選び方
NASのディスク容量を決める
まず一番始めに確認するのが、NASのデータ容量です。新規でNASを購入する際のデータ容量の計算方法ですが、保存するであろう全データ容量(現在お使いのNASに保存されている全データ量の2〜3倍の量が目安となります。
またHDDの容量は慣習で1000Byte=1KBとして計算されています。WindowsやMacでは1024Byte=1KByteで計算、表示されますのでご注意ください。
RAID(レイド)システムを搭載している
データ容量の次に確認するのが、NASにRAID機能が搭載されているかという事です。RAIDとは複数のHDDにデータを分散して書き込むことによって、NAS全体での故障リスクを減らし、より安定した運用を実現するシステムです。機種によって対応しているRAID形式が異なりますので仕様を確認ください。RAIDを利用すると搭載されているデータ容量より使える容量は減りますのでご注意ください。
RAID機能が搭載されているNASの中にはホットスワップ機能を備えているものもあります。これはあるHDDが壊れたときもシステムを止めることなく、業務を続けたままでそのHDDを交換できる機能です。さらにあらかじめ予備用のHDDを装着しておきHDDの故障を検知して稼働するHDDを切り替えるホットスペアと言う機能を備えているものもあります。止められないシステムには必須の機能となります。
■主なRAIDの種類■
RAID0 | データを2つのハードディスクに分散して書き込む。そのため高速にデータを読み書きできますがどちらか一方のハードディスクが故障すると使えなくなってしまいます。 |
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RAID1 | 2つのハードディスクに全く同じデータを書き込むミラーリング方式。書き込み速度は遅くなるが、どちらか一方のハードディスクが故障しても運用可能。 |
RAID5 | 3台以上のハードディスクで構成され、各HDDにデータを分散しながら書き込む。1台のHDDが壊れても運用可能。ただし、2台故障すると動作不可となり、データの再生・回復もできなくなります。ハードディスクの台数が増えれば増えるほど高速で読み書き可能です。 |
RAID6 | RAID5と似た方式ですが4台以上のハードディスクで構成されます。RAID6では2台目のハードディスクが故障しても稼働可能。3台目の故障で動作・回復不可能となり、RAID5より耐障害性が向上しておりRAID5同様にハードディスクの台数が増えれば増えるほど高速で読み書き可能です。 |
RAID10 | RAID1とRAID0を組み合わせた方式で4台以上のハードディスクで構成されます。高い耐障害性と高速化の両方を狙う方式です。 |



自動バックアップ機能がある
自動バックアップ機能に関しては、ほぼすべてのNASが対応しています。バックアップの方式には、「フルバックアップ」・「増分バックアップ」・「差分バックアップ」と3つの方法があり、データのサイズや重要度によってバックアップ方式を選択し設定します。またバックアップ方法としてファイル単位のバックアップ(ファイルバックアップ)とシステムを丸ごとバックアップ(イメージバックアップ)の2つの方式があり、購入前にどの方式、どの方法に対応しているのかご確認ください。実際にトラブルが発生したときの復旧方法や時間を考える時に違いが出てきます。
バックアップは外付けのUSBハードディスクや他のNASにデータをバックアップするので、NASとは別に購入していただく必要があります。ただしサーバほど高機能なバックアップ機能は用意されていないことが多いため、特にデータが大容量の場合はサーバも検討されることをお勧めします。
社外からNASの共有データにアクセス
最近は社内に置いてあるNASの共有データにアクセスしたいニーズが増えています。最近のNASは対応しているものも多いです。社外でも社内からと全く同じように利用したい場合にはVPNなどの技術を使うかそれともクラウドストレージサービスを使う方法をお勧めしますが「共有ファイルが見れればそれで充分」と割り切った方法で利用できるならNASは選択肢としてあり、だと思います。クラウド化に関しては以下の記事も参考ください。

また意外に忘れがちなのがファイルへのアクセス速度です。NASそのものの性能ももちろんですが社内LANが遅いと社外からのファイルアクセスも遅くなってしまいます。以下の記事もご参考ください。

デュアルコア、クアッドコアのCPUを搭載している
NASには、複数人が同時にアクセスするため、本体にもある程度の処理能力が求められます。そのため、高性能のデュアルコアCPU(コアが2つ)、クアッドコアCPU(コアが4つ)を搭載したモデルをおすすめします。また、CPU自体の性能も機種によってまちまちなので、できるだけ最新のモデルを購入しましょう。
LANの速度が速く、USB3.0に対応している
LANポートは最低でも「1GBASE-T(1ギガビット・イーサネット)」対応の高速Gigabit対応のものを選んでください。最近は10GBASE-T(10ギガビット・イーサネット)に対応したNASやThunderbolt3(転送速度40Gbps)対応のNASもあります。またUSB3.0にも対応していることを確認しておきましょう。安価なモデルですとUSB2.0にしか対応していないNASもあります。(⚠バックアップ用の外付けHDDも「USB3.0」に対応したモデルを購入してください)
どのような端子(インターフェース)が備わっているか購入前にご確認ください。

クラウド連携について
最近はクラウドストレージとの連携機能が用意されているNASもあります。Amazon S3, Dropbox, Microsoft Azure, OneDrive, Boxなどにデータをアップロードしてクラウドバックアップとして利用することもできます。ただし大容量データになるとアップロード速度が遅いケースが多いのでストレスを感じることが多いかもしれません。その場合は最初のアップロードはパソコン等から行うことをお勧めします。
接続端末はWindows?Mac?
WindowsとmacOSの「ファイル共有」は、それぞれ別々の規格をたどって結果的にWindowsの規格で統一されつつある、という歴史があります。したがってWindowsとMacOSが混在する環境ではちょっと注意が必要になります。以下の記事もご参考ください。

UPS(無停電電源装置)との連携機能
突然の停電でNASの大切なデータが壊れてしまうことを防ぎたい方は多いでしょう。そういった突然の停電に備えることが出来るのがUPS(無停電電源装置)です。NASの機種によって対応しているUPSの機種が異なりますので購入前にご確認ください。詳しくは以下の記事をご参考ください。

おすすめのメーカーと製品
社員数10人未満のSOHOや零細企業に適したおすすめのNAS
これらは全てLinuxを元にしてメーカー独自の拡張を加えたものです。
BUFFALO/TeraStation (バッファロー/テラステーション)
BUFFALOのTeraStation/LinkStationは、国内シェアトップで多くの企業に採用されています。ラインナップが多く安価なモデルLinkStationから高機能なTeraStationまでそろっています。完成品として提供されているためすぐに使うことができ初めて導入される会社に向いています。SMB/CIFSをサポートし、Windows、Macが混在しているネットワークでもファイル共有可能。さらに、グループ・ユーザーごとににアクセス制限を設定でき、安全なデータ管理が行えます。RAID1/0に対応。CPUにAnnapurna Labs Alpine AL212 デュアルコアプロセッサーを採用し、高速化を実現。
IODATA/LANDISK (アイ・オー・データ/ランディスク)
IO-DATAではNASのことを「LAN DISK(ランディスク)」という名前で販売している完成品です。基本的な機能はBUFFALO製品と変わりありませんが、シリーズのタイプによって多少機能が異なります。HDL-XRW/2Dシリーズは、HDDを2台増設すれば、4ドライブモデルとして多彩なRAID方式を設定することができます。
Netgear/ReadyNAS(ネットギア/レディナス)
ネットワーク機器で有名なNetgear社はReadyNasというブランドのNASを販売しています。NASキットとして提供されており筐体とHDDが別売りなのでHDDを用意し、自身で装着します。従来の「信頼性」と「セキュリティ」に加えて「高パフォーマンス」「大容量」「高密度」を訴えているNASになります。
QNAP/TS-431X2-2G (キューナップ/TS-431X2シリーズ)
QNAPのNASは、NASキットの形で提供されており自由にカスタマイズ可能で、HDDを別に用意し、自身で装着します。装着は難しくないです。高速通信に強く標準でSSDキャッシングのサポートや10GbE SFP+ポートやThunderbolt3を搭載しているモデルも販売されており動画ファイルなどの大きなファイルをやり取りすることが多い業種に向いています。
Synology/DiskStation DS920+(シノロジー/ディスクステーション DS920+)
SynologyのNASは、NASキットとして提供しており筐体とHDDが別売りなのでHDDを用意し、自身で装着します。装着は難しくないです。その分構成を自由にカスタマイズ可能です。また管理画面からの初期設定はウィザードに従えば簡単に行えます。アプリを追加することによって様々な機能を簡単に追加することができます。上記3つのモデルと違って外部からのアクセスQuickConnectがルータ設定の必要がなく簡単に行えます。
社員数30人を超える中小企業に適したおすすめのNAS
社員数が多くなるとLinuxベースのNASでは性能が不足してくるケースが多いです。Windows Storage Server / Windows Server IoT for Storage(WSS)のNASの検討をお勧めします。特にISMS(ISO27001、情報セキュリティマネジメントシステム)やプライバシーマーク制度を導入、検討されている場合に導入されることが多いActive Directoryとのスムーズな連携が可能です。
各社ともWindowsの標準機能に加えて簡単設定用のツールや監視ツールを独自に用意しています。すべて完成品として提供されています。
BUFFALO/TeraStation (バッファロー/テラステーション)
Buffalo社はTerastationのブランドでWSSのNASも販売しています。スタンドアローンタイプとラックマウントタイプがあります大容量HDDが搭載されたモデルがたくさん発売されています。
IODATA/LANDISK Z (アイ・オー・データ/ランディスク・ゼット)
IO-Data社はLANDISK ZのブランドでWSSのNASも販売しています。
ELECOM/Netstor(エレコム/ネットスター)
コンピュータの周辺機器メーカーとして有名なELECOM社もWSS搭載のNASを販売しています。
NASのセキュリティーについて
NASには重要なデータが保存されているため、社外だけでなく、社内の人間からも攻撃対象となります。そのため、しっかりとしたセキュリティー対策が必要となります。下記最低限のセキュリティー対策となるのでしっかりと確認し、運用してください。
- ルーターのセキュリティー設定、ファイヤーウォールの設定
- NASの管理画面にログインする時のIDとパスワードの設定(パスワードの管理)
- NASのファームウェアは最新のバージョンに更新する
- NAS専用のウイルスソフトがインストールされたモデルを購入する
とげおネットのNAS設置事例
とげおネットが手掛けたNASの設置事例になります。


まとめ
いかがでしたでしょうか?NASを選ぶ際は、データ容量の確認、RAID方式の確認、バックアップ機能の確認、その他機能の確認、最低限これだけ確認しておけば失敗はありません。ご不明点や不安な事がある場合は、弊社までお気軽にご相談ください。御社に最適のNASをお選びいたします。
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